攻撃と防御、どちらのバフを上げるべきか

バフ攻撃防御戦闘モデル

はじめに

乗り英雄(joiner)が提供する第一スキル(S1)は、自軍全体の攻撃か防御を上げるタイプが最もよく使われています。さて、この2つはどちらを上げるべきでしょうか。

同じ攻撃系の中でも「攻撃」と「殺傷」のように入れ物が分かれていて、そこは分散させた方が効率的です。この点は英雄スキルによるバフの効果一覧で整理しました。それに対して、そもそも攻撃と防御のどちらを上げるかは、その一つ外側の、少し上流の疑問です。

この記事では以前の記事の結論をつぎ合わせて、この疑問を理論的に考えてみます。結論としては場面によって変わるのですが、その判断材料が「ターン数」という一つの視点にまとまります。

前提: 強さは A×DA \times D で決まる

まず前提の確認をします。この記事では、AA を与ダメージ係数、DD を被ダメージ係数と呼びます(詳しくはダメージの基礎値とその計算を参照してください)。以前の記事では、部隊の本当の強さが

S=ADZn(0.5≤n≤1.5)S = A D Z^{n} \qquad (0.5 \leq n \leq 1.5)

のように表れることを扱いました(総力と実際の強さ)。SS は強さの目安、ZZ は兵士数で、nn は兵の使われ方によって変わる係数です。1兵種に絞ったモデルを厳密に計算すると n=3/2n = 3/2 でした(戦闘の残存率は強さの比で決まる?)。

ポイントは、AA と DD が積になっていることです。例えば、AA を10%上げた場合と DD を10%上げた場合を比べてみましょう。式の中の AA か DD どちらを1.1倍しても、

S=1.1×(もとの値)S = 1.1 \times (\text{もとの値})

となって、結果はどちらも同じ1.1倍です。つまり、全体に効くバフを1つ選ぶだけなら、攻撃を上げても防御を上げても同じになります。攻撃ばかりに偏って防御側の入れ物を無視するのは、この意味でもったいないということですね。

置き去りにしている前提

実はここには一つ、置き去りにしている前提があります。上の式は戦闘を「連続的」に扱ったもので、攻撃は実はターンごとに行われるという離散性を抜きにしています。この離散性を戻したとき、AA と DD に違いが出るのか。ここからがこの記事の本題です。

AA と DD が違う結果になる3つの場面

違いが出る場面は、主に3つです。

前2つは明らかなまま、ここからはターン数について考えてみましょう。

DD は戦闘を長く、AA は戦闘を短くする

戦闘モデルの記事では、1ターンで兵がどれだけ減るかを

ΔY1=−A2D1Y2\Delta Y_1 = - \frac{A_2}{D_1} \sqrt{Y_2}

と表しました(戦闘の残存率は強さの比で決まる?)。Y1Y_1 は減る側の残り兵士数、Y2Y_2 は攻撃する側の残り兵士数で、添字の 1, 2 は陣営を表します。要するに、自分の減りの速さは自分の DD に反比例し、相手の AA に比例します。

この式から、どちらを上げるかで戦闘の長さが変わることが分かります。

動かす側1ターンでの減りターン数
DD を上げる小さくなる増える(戦闘が長くなる)
AA を上げる大きくなる減る(戦闘が短くなる)

つまり、ターン数を増やしたいなら DD を、減らしたいなら AA を上げるという戦略が成り立ちます。

ターン数が増えると何が起きるか

では、ターン数が増えること自体にどんな意味があるのでしょうか。ターン数がとても大きくなると、実際の戦闘は上の式のような連続的なモデルに近づきます。そう考えると、次の2つが起こります。

  1. オーバーキルの無駄が効かなくなる: 例えば、相手の盾がすでに倒れているのに弓兵がさらに攻撃するといった、ターン内の無駄打ちです。戦闘が長くなるほど、このような無駄が全体に占める割合は小さくなります。
  2. 確率の要素が期待値に近づく: スキル発動率のような運の要素は、ターンを重ねるほど平均化されます。

つまり、ターン数が増えるほど結果は理論値(S=ADZnS = ADZ^n)に近づき、強い方が勝ちやすくなります。逆にターン数が少ないほど、上振れ・下振れといった結果のブレが残ります。

要確認: ここはモデルからの推論です。実際の戦闘レポートでターン数と結果のブレの関係を検証できていないので、理論上の話として読んでください。

どちらを上げるべきか: 場面ごとのまとめ

ここまでをまとめます。

攻撃系(AA)を上げたい場合

防御系(DD)を上げたい場合

混合

実践面: 防御 +20% を重ねるか、攻撃 +25% か

別の入れ物(乗算バフ)を組み合わせた方が効率的、というのは英雄スキルによるバフの効果一覧で説明した理屈です。ただしここで気をつけたいのが、入れ物が違うからといって、小さい値の防御系バフを何枚も並べるのが最良とは限らないということです。

私が知る限りの事実として、+25% の攻撃バフを持つ英雄は数多くありますが、防御 +25% を持つ英雄は少なく、種類も限られています。つまり攻撃系は +25% 帯、防御系は +20% 帯が中心です。

こう考えると、新しい入れ物に1枠使うとき、攻撃 +25% は (1+0.25)(1+0.25) 倍、防御 +20% は (1+0.2)(1+0.2) 倍です。値だけで比べれば攻撃の方が大きい。だから、防御系の +20% を何枚も重ねるなら、攻撃 +25% の方が得なことが多い、というだけの話です。

ただし、同じ入れ物に重複して積む場合だけ事情が変わります。重複は加算になるので、20% でも悪くないのです。例として、パトリックの S1(HP +25%)が同じ効果で2つ乗ると、同じ入れ物なので

(1+0.25+0.25)=1+0.5(1 + 0.25 + 0.25) = 1 + 0.5

となります。これは

(1+0.25)×(1+0.2)=1.5(1 + 0.25) \times (1 + 0.2) = 1.5

と等しく、つまり2つ目のパトリックは実質 20% 分の効果です。実質 20% なら悪くはありませんが、攻撃の新しい入れ物 (1+0.25)(1+0.25) には及びません。だから、防御でパトリックを2つ並べるより、通常は攻撃 +25% を入れた方が良い、というのがこの例の結論です。

注意: これは攻撃と防御という、カテゴリーの外側の話です。攻撃系の中でも殺傷が低ければ、先に殺傷を上げるべきです。同じカテゴリー内のバランスの話は成長戦略の記事を参照してください。

まとめ